【第八章 全ての創り手は、『静かなるBUYサイン』を信じて進め ~心構え術~】

■人生という『物語』の主人公は自分自身

『どんなことでも明るく楽しくやる』ことだけが、唯一、他人と違うところで、自分が結果を出すために頑張り続けることができた理由ではあるのですが……。

 しかしそうはいってもこの世の中、辛く苦しいことや、失敗して落ち込んでしまうことが山ほどあります。いつも明るく楽しく暮らせればいいのでしょうが、人生そうもいきません。 

 そんなとき、僕は『明るく楽しく!』を心がけるために、人生を『加点法』で考えます。

 創作術としての加点法は『○○だから面白い』という考え方であるとお伝えしました。それを人生の出来事にも当てはめて、『○○だから楽しい』と考えてみるのです。

 いわば、これは僕のオススメする『辛い出来事との向き合い方』です。

 人生における辛い出来事といえば――

 編集者なら、ずっと売れない作品ばかりで、結果が出なくていつも落ち込んでしまう――。

 小説家なら、どうしても最後まで書き切れず、また作品を途中で放り投げてしまった――。

 営業職なら、仕事でミスをしてしまい、取引先に謝罪して回ることになってしまった――。

 中学生なら、高校受験の勉強に全然身が入らなくて、テストの結果もさんざんだった――。

 高校生なら、好きな相手に勇気を出して告白するも、フラれて何もやる気がおきない――。

 どれも非常に厳しく、味わいたくない苦い経験だと思います。

 これらの出来事に対して、『人生の加点法』で考えていくのです。

 良いことも悪いことも起きる日々の中で、成功体験の加点法は簡単です。『つくった本が人気になったから人生は楽しい』『面白い小説が書けたから人生は楽しい』『仕事がうまくいったから人生は楽しい』『テストで良い点をとれたから人生は楽しい』『好きな相手に告白したらOKがもらえて人生は楽しい』……など。起きている出来事がプラスの場合、ばっちり問題ないですね。

 難しいのは、失敗体験のときです。『つくった本が売れないから人生は楽しい』『うまく小説が書けないから人生は楽しい』『仕事で失敗したから人生は楽しい』『テストの結果が悪かったから人生は楽しい』『女の子にフラれたから人生は楽しい』……考えられるわけないだろ! と思いましたか? たしかに、無理です。否定はしません。ただ断っておきますが、僕の『人生の加点法』は、すでに起こってしまった出来事をひっくり返すようなものではありません。『起こってしまった辛い出来事をどう捉えるか、どう向き合っていくか』というアフターケアシステムです。

 さて、今まで僕は、さんざん『物語』の作り方の話をしてきました。

 ですから、ここからはある意味騙されたと思って、あなたの人生を『物語』の一つだと考えてみてください。あなたは、人生という『物語』の作者をご存じですか? もちろん、あなた自身です。その『物語』の主人公はご存じですか? もちろん、あなた自身です。

 いま、とても辛い出来事が理不尽にも自分の人生に降りかかったとします。とても悲しくて、やりきれません。しかし、起こった出来事を変えることもできません。

 そんなときは、辛い出来事を自分の人生における『物語の見せ場』として考えてみるのはどうでしょうか。

 たとえば、もしかしたら今の状況は、最強の敵を倒す前のピンチを描いたシーンかもしれません。終盤での大逆転劇を盛り上げるために仕組まれた試練のイベントかもしれません。カッコ良くクライマックスを迎えるための修行パートなのかもしれません。

 今の辛い時期は、後に控えている楽しい出来事にたどり着く直前に仕掛けられた壮大な『前振り』なんだ……そう考えるだけで、どこか気が紛れ、辛さが軽減されたりしないでしょうか。あと少しだけ頑張ってみようかな、と思う元気が湧いてきたりしないでしょうか。

 もちろん根本的な解決法ではありませんので、所詮はただのごまかし、詭弁なのかもしれません。しかし、それで少しでも人生が『楽しく面白く』感じるようになり、避けることができなかった不幸な出来事を少しでも前向きに考えられるようになるなら、やってみるだけの価値はあるでしょう。ごまかしや詭弁だとしても、向き合い方を変えるだけで気分が楽になったり心が軽くなって、もうちょっとだけ踏ん張ってみようと思えるのなら、それは人生にとってプラスに違いありません。

 さきほどのたとえに当てはめます。『つくった本が売れない(けど、次作をヒットさせるヒントを掴める)から人生は楽しい』『うまく小説が書けない(けど、経験を積んで最後は書き上げられるはずだ)から人生は楽しい』『仕事で失敗した(けど、それを反面教師にもっと良い仕事ができそうだ)から人生は楽しい』『テストの結果はさんざんだった(けど、これ以上下がる事はない。あとは上がるだけだ)から人生は楽しい』『女の子にフラれた(けど、また別の出会いがある)から楽しい』……と考えてみるのはどうでしょうか。

 辛苦の時をどうにか『人生の加点法』でやりすごすことができれば、「たいしたことなかったじゃん」と後日思い返せるかもしれません。

 僕が、編集とは原稿の「いいね!」ポイントをより伸ばし、開花させることであると考えているのと同じく、人生を充実させることとは、あなたの「いいね!」ポイントをもっともっと伸ばしていくことなのです。凡人の僕には、その方法しか見つかりませんでした。ですが、僕はこの『なんでもかんでも物事を楽しく進める方法』――『人生を加点法で眺める』ことで、たくさんの悩みや問題を乗り越えることが出来ました。