著者:三木一馬
僕はイラストレーターの『フレッシュさ』にこだわります。具体的には、他レーベルでの挿絵経験がない方を意識して選んでいます。ただ、たくさんのレーベルができた今では、未経験のイラストレーターを見つけることはさすがに難しいのですが……。
それでも数多あるレーベルでは見たことのないイラストがカバーを飾っているほうが希少性もでますし、その作品の特徴・個性にもなります。もちろん未経験ゆえに一か八かのギャンブル性が高くなりますが、それ以上の結果が出ることが多かったのは事実です。
過去の事例を挙げますと、『灼眼のシャナ』のいとうのいぢさん、『しにがみのバラッド。』の七草さん、『撲殺天使ドクロちゃん』のとりしもさん、『とある魔術の禁書目録(インデックス)』のはいむらきよたかさん、『アクセル・ワールド』のHIMAさん、『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』の左さん、『電波女と青春男』のブリキさん、『魔法科高校の劣等生』の石田可奈さんは、依頼したときに初めて、いわゆる『ラノベ』挿絵を描くことになった方々です(ブリキさんは厳密には異なるのですが、一般エンタメ小説としては初です)。どなたも、大変素晴らしいイラストレーターだと思うのですが、いかがでしょうか?
イラストレーターを探す場合、僕は主にインターネットを使います。
二〇〇〇年中盤ごろはまだpixivやニコニコ静画はそこまでメジャーはなく、イラストレーターはそれぞれ個人のサイトでイラストを発表していました。僕はその個人サイトを片っ端からチェックしていました。個人のイラストサイトが更新された際、そのリンクを毎日紹介してくれるサイトがあり、それらも利用していました。当時はこういった、自分と感性の合う『アンテナサイト』をどれくらいキープできているかでその編集者のイラストレーター選定スキルの有る無しが決まっていたように思います。
イラストレーターを探しているピークのときは、一日でだいたい三〇〇~四〇〇サイトをチェックし、一ヶ月間で一〇〇〇〇サイトは見ていました。一〇〇〇〇サイトもチェックしていれば、「おっ!」と感じるイラストがたくさん見つかります。その中から挿絵のイラストレーターに選ぶポイントは『全体的に良いものを描く人』ではなく、『特化した武器を持つ人』でした。
ひと目見て、そのイラストレーターと分かる個性的な一枚があるか。
オール八〇点ではなく、ひとつだけの一二〇点があるか。
こういった『ブレイクスルー』を大切にしています。