【第四章 『売れる』と『売れない』はココが違う ~編み出す(編集術)~】

■作家渾身の作品をより多くの読者に知ってもらうためには?

 小説、とくにエンタメ小説(ラノベ)の売れ行きは、なにで決まるのでしょうか?

 文章力? キャラクター? パッケージイラスト? 僕は、どれも正解ではないと思っています。では、面白いか、面白くないか? ――これも、違うと考えています。

『売れる、売れない』が『面白いか、面白くないか』でもないとすれば、一体なにで決まるのでしょう。

 僕は、その作品に触れた人の数で決まると思っています。『はじめに』で書いたように、面白さは個人の主観に依るものですから、共通認識の定義としてはかなり不明瞭です。そして創作物には、面白くない作品はひとつもありません(と僕は考えています)。ということは、作品に込められた『面白い』を、きちんと届けられるかどうか、そこにいる読者にその『面白い』の意味をしっかり伝えられたかどうかで決まるのではないでしょうか。

 より正確に言うと、『面白さが伝わった読者が多い』ときに本は売れる……もっというならその『読者の判断機会に作品が恵まれたかどうか』で決まると思うのです。

 つまらない話を作ろうと思って小説を書く作家はいません。創作者が「誰かに読んでもらいたい」と考えた時点で、少なくともその本人自身は必ず『面白い』と感じています。

 あとは、その面白さを読者に伝えられるか、その数が多いかどうかが勝負なのです。

 では、『面白さを知らせることができなかった』=『売れない』ことを防ぐにはどうすればいいか。作家がベストを尽くして創り上げた渾身の作品を、より多くの読者に広く知ってもらうためにはどうすればいいか。

 その方策を練るのが、作家をサポートする編集者の仕事であると考えています。