【はじめに】

■とある編集の仕事目録

 僕の経歴を紹介します。大学卒業後、出版社メディアワークスに入社し、以来十四年半ほど小説編集者の仕事をしてきました。編集した小説は電撃文庫、メディアワークス文庫合わせて合計五〇〇冊をかぞえ、担当作の累計部数は六〇〇〇万部となります。

 その内訳は、『とある魔術の禁書目録(インデックス)』一五八〇万部、『ソードアート・オンライン』一一三〇万部、『灼眼のシャナ』八六〇万部、『魔法科高校の劣等生』六七五万部、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』五〇〇万部、『アクセル・ワールド』四二〇万部、『乃木坂春香の秘密』二〇〇万部、『電波女と青春男』一五〇万部、『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』一三五万部、『しにがみのバラッド。』一三〇万部、『撲殺天使ドクロちゃん』一一〇万部、『ヘヴィーオブジェクト』一二〇万部などです。

 本書は、僕なりの『仕事目録』です。 一人の小説編集者として、約十五年間仕事をしてきた経験をもとにした回顧録であり、必ず守る『自分ルール集』のようなものです。

 ヒット作はどうやってつくられたかといった誕生秘話やバックグラウンド、あまり表には出てこないエンタメ業界の裏側、小説編集者として仕事をする上での『心構え』やこだわってきたこと、より多くの読者に面白いと思ってもらえる作品にするためのコツ、失敗してしまった仕事への取り組み方、激務にどう向き合い、どう考え方を変えていったのか……そういったものを詰め込んだつもりです。

 本心を言えば、もし他の同業編集者に本書を読まれると、僕にとっては「敵に塩を送る」ことになりますから、非常にまずいですし、ぶっちゃけ都合が悪いです。ですが、もしこれをきっかけにしてこの業界に『面白さ』を感じたり、編集という仕事に『面白さ』を感じたりしてくれる方が増えるなら、ひいてはそれが電撃文庫のプラスになると信じています。